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【内田雅也の追球】昔も今も「形より感性」 - スポニチ Sponichi Annex 野球
もう40年以上の野球記者生活で「打撃は感性」という話は中西太、落合博満、岡田彰布……ら多くの先人から聞いた。感性は人それぞれのため、たとえば岡田は監督時代、打撃コーチに「教えるな」と命じていた。
同じ話を阪神キャンプ地の沖縄・宜野座で監督・藤川球児から聞いた。球団スペシャルアンバサダー(SA)の糸井嘉男を臨時打撃コーチに招いた意図について語るなかで「バッティングは、やっぱり感性ですからね」と言ったのだ。指導初日、糸井は「水バット」と呼ぶべき、バットの中に水が入った道具を持参していた。藤川は言う。「きょう使っている器具であれば、バットの後ろのたわみとかに特化して、感覚が大事になる。でも、形を動かしてない。それが助かるし、邪魔しない。形で言う人はいらないです」なるほど「形」より「感性」に全く同感する。岡田同様に、落合も感性を重んじた。<わたしにはコーチという仕事は教えるものではなく、見ているだけでいいという持論がある>と著書『コーチング』(ダイヤモンド社)にある。現役引退から3年の2001年、横浜(現DeNA)監督の森祇晶に誘われ、臨時打撃コーチをした当時の体験が基になっている。<野球が上達する一番の秘訣(ひけつ)は、技術的なことでも精神的なことでもない。その選手の感性の豊かさだ><すべてその選手の感性次第だ。そうした部分には指導者も入り込めない>。落合や岡田の話が古いと言うなかれ。データによる分析が深まるいま、イチローが警鐘を鳴らしている。一昨年12月、MBSの番組『情熱大陸』で松井秀喜と対談した際、データ重視の野球で失ったものを「感性ですよ」と言った。「だって目で見えてるものしか信じられなくなる。何マイル以上なら何パーセントの割合でヒットが出る。そうじゃない技術がある。とにかく見えるものしか評価しないというのは、危険ですね」栗山英樹も日本代表監督でワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝した2023年、日本ハムのチーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)に就任し、懸念を打ち明けている。「データの使い方は大事なんですけど、そこに寄り過ぎると人間の一番大事な感性が消えちゃう」感性を巡る話は尽きることがない。 =敬称略= (編集委員)