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【特別対談 阪神・近本光司×原口文仁氏(2)】「右中間にちょっとスライス」を打てれば対応の幅は広がる - スポニチ Sponichi Annex 野球
阪神・近本光司外野手(31)と、今年から新たにスポニチ評論家陣に加わった元阪神・原口文仁氏(33)が対談し、思い出話や技術論に花を咲かせた。本紙評論家として初の対談に臨んだ原口氏は、気心の知れた後輩に、あと10年以上の現役生活継続と自身が引退した年齢でのシーズンMVP獲得を期待。また、先輩からの技術面の指摘に対して近本は、追求している理想の打球を挙げた上で、そのために今キャンプで取り組んでいる「指1本分」の秘密などを赤裸々に語った。
【(1)からの続き】原口 野球の話をするけど、光司はやるべきことが自分でもすごく明確に分かっているよね。まず聞きたいのは、毎年、毎年レベルアップして、挑戦している中で結果を出し続けている。今シーズンの理想の打球とか方向性を聞かせて。近本 フミさんから取材を受けて、初めて野球のこと聞かれた(笑い)。理想の打球はあります。右中間にちょっとスライスのような打球を打っていきたいというのが一つありますね。原口 なるほど。近本 そのためには今までよりいいバットの角度でボールまで入っていかないといけない。そこが最近はちょっと抜けていた。ボールがドライブするってあまり良くないじゃないですか。原口 そうだね。近本 右中間にスライスの打球ってなかなか打てない。しっかりバットを内側から入れて、ボールをつかまえているから右中間に行く。そういう打球を打てると、打席でも対応の幅が広がるので、いろんな球に対応できる。アウトコースにタイミングを抜かれたとしても対応できるしインコースに強い球が来た時、それはドライブ回転になっても仕方ない。それをベースに今はやっています。原口 光司がこうやってしゃべってくれると、ファンの人も映像で見たら共感できる部分があると思う。これが近本選手の理想の打撃だったな、とか。一つの楽しみになると思う。相当、オフから考えてやっているね。近本 今までは練習でバットを長く持っていたんですけど、今年はちょっとだけ短く持っているんですよ。それは、やりたいことをやるためには、今、バットを長く持っていてはできないんです。原口 なるほど。近本 最初は指2本分短くしないとできなかった。それが今1本分になっている。やっぱり長く持ったらどうしてもバットが体から離れていっちゃう。離れていったら遠心力が強くなるからボール自体は飛ぶんですけど、自分の理想としている打球になりづらい。そこを今、なんとか我慢しています。原口 完全にゲームを見据えてバッティング練習をしている。長い期間、積み重ねてきたものが自分のものになる。光司は続ける能力、忍耐力、そういう強さを持っている。これからも安心して見ていけるね。こういう話は現役の時からよくしていたよね。近本 食事に行ったりして、よくしていましたね。原口 写真を見たらバットを(指)1本分余らせている。光司は毎年、バットを目いっぱい長く持ってバッティングを練習して、オープン戦も長く持っていた。キャンプ初日から見て、それが気になっていた。近本 難しいですよね。原口 ただバットを短く持っているんじゃなくて、そういう理由があってやっているというのが深いなと。そういうところをファンの方にも、キャンプでいつもと違うところを見てもらうと、より楽しめるかな。その真相を今日聞けて、僕も良かった。スポニチの1面に載る対談の貴重な話だけに。近本 原口さんらしい記事になればな、と思いますね。原口 僕がメインじゃないよ。近本 フミさんの真面目なところが出ていますね。原口 ちょっと話が違う方向に行っちゃったね。こうやって、近くにいた人は近本光司のことを分かっているけど、新聞、メディアを通して見る人は、こんなに野球に対して熱いんだなって分かってほしい。近本 記者の方に対しては、僕はあまりいいイメージを持たれてないと思っている(笑い)。僕が普通に難しい質問に答えても、原口さんは理解できるんですよ。フミさんだから理解できるのかなと思いますけど、なかなかそこを分かりやすく言ったら、言いたいことが言えなかったりする。“バットを内から出しています”と言ったら分かりやすいけど、でも、そうじゃないじゃないですか。原口 もう一個…もう二個ぐらい深いところまでいくとね。近本 そこまでいくと、理解されなくていいかなと。原口 そうやって聞きに来てくれる若い子とか中堅の選手が増えたら、もっとチームのレベルも上がると思う。光司と同じ球団にいる幸せ、若い子も感じて、自分がうまくなるために、光司のようなトップの選手に話もどんどん聞いてほしいよ。近本 やめてくださいよ(笑い)。原口 光司は外から見たら真面目で寡黙にやってるように見えるけど、僕たちが知ってる近本光司はこんなもんじゃない。それを少しずつ小出しにして世間の皆さんに“近本ってこんなに面白いやつなんだよ”と発信していけるように頑張るよ。近本 フミさんは評論家になったばかりで、まだ緊張していますね。こんな感じじゃないし、これからもっとフミさんの色が出てくる。そこから出てくるものがすごくいいものなので、それを僕たち選手が引き出せるように。逆にね。【取材後記】濃密な20分だった。本紙評論家として臨む初対談。やや緊張気味だった原口氏との対談を円滑に進めるべく、3学年下の近本が冗談を交えて肩をほぐす姿は、新鮮だった。近本が発した言葉の端々には、大病を乗り越え、高卒入団でプロ野球生活を16年も過ごした原口氏へのリスペクトがちりばめられていた。実はこの二人、シーズン中の全体練習前に室内練習場で顔を合わせることが頻繁にあったそうだ。打撃ケージでは右打者の原口氏と左打者の近本が向き合うことが多かった。会話はほとんどないが、原口氏はじっと近本の打撃を観察し、その打ち方をこっそり模倣したこともあった。「骨で打つ」など独特な表現で打撃理論を語る近本の言葉は、難しい。その理解者である原口氏の質問にも、リスペクトの思いが込められていた。だからこそ、中身の濃い対談になったに違いない。(石崎 祥平)