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【元虎番キャップ・稲見誠の話】臨時コーチ以外指導禁止!問題にも話題にもならない阪神・藤川監督の発言、まさに勝てば官軍…
阪神・宜野座キャンプで守備練習を見る鳥谷敬氏なぜ、問題にならないのか。それどころか、話題にすらならないから不思議だ。発言内容は確かに正しい。しかし聞きようによっては、激怒する人間だっている。シレっと、エゲツナイことをサラっと言う。阪神・藤川球児監督は本当に凄い指揮官だ。「形を動かしてないですから、糸井の場合は。それが助かるし、邪魔しないんですよ。形で言う人はいらないです。一切やめてほしいです。チーム内で共有していますけど、臨時コーチで来ていただいた方以外の指導はご遠慮願っている状況です。チーム内で共有しています」3日、キャンプ地の沖縄・宜野座にOBの赤星憲広氏と糸井嘉男スペシャルアンバサダー(SA)が臨時コーチとして招かれた。糸井SAが持参したのは、中に液体が入った透明の「アクアバット」。スイングすると液体が移動し、バットの重心を確認できる。昨年は「クリケットバット」を使用して佐藤輝明らにアドバイスを送った。虎将にしてみれば道具を使った指導は「形を動かしてない」「邪魔しない」というわけか。逆にバットのトップの位置やスイングの軌道などを指摘する人間は「いらないです」。フォームなどのアドバイスは「一切やめてほしい」となる。現場を預かる指揮官にとって、部外者の指導は困る。岡田彰布オーナー付顧問も監督時代は、たとえOBであっても、嫌った。ただ、アノ岡田監督でも、ここまで公には言わなかった。球団が、もっと言えば藤川監督自身が、その存在を認めて依頼した人間だけが、指導できる。6日には掛布雅之OB会長や鳥谷敬氏が訪れた。ここまで禁止されれば、なにも言えない。言葉を交わすだけでも憚れる。そんな感じだ。藤川監督とOB…微妙な関係だと個人的には思っている。昨年9月7日、甲子園での広島戦で、プロ野球史上最速でリーグVを飾った。優勝監督インタビュー。「いや、選手たちが強いわ」から始まり、立て板に水のごとく、言葉をつないだ。そして、途中自らOBに言及した。「OBの皆さま、今までたくさん…僕はまだ若いですから、お世話になってきた先輩方から距離をおいてグラウンドに没頭する形で、ずっと立ち続けたので、またいつか、先輩方に、戦うためだったので、お許し願いたいなと思いますね」晴れの舞台で異例の謝罪を口にした。違和感だけが残った発言が両者の関係を示している。少なくとも虎将はOBからの何らかの空気を感じ取って「お許し願いたい」とファンに直接関係のないフレーズを甲子園からメッセージとして送った。1999年から3年間、阪神を率いた野村克也監督はOBと衝突した。02年から2年間、タテジマを身にまとった星野仙一監督は田淵幸一、島野育夫の両氏に橋渡し役を命じた。味方にすれば頼もしい援軍になるし、敵に回せば厄介な存在。それが阪神OBだ。幸いにも野村時代のような表立った軋轢はない。しかし表に出てこないオトナの反応も、これまた怖い。臨時コーチ以外の「指導はご遠慮願っている状況です。チーム内で共有しています」。何度聞いても、この主張は正しい。誰も反論できない。虎将自身も責任を負う覚悟があるからこそ、口にしたのだろう。要は勝てばいい。周囲は黙る。批判できない状況を作り上げればいい。許された者だけが選手に対してモノ言える。それが藤川阪神。勝てば官軍。負ければどうなるか。連覇に向け、勝つしかない状況は色濃くなるばかりだ。■稲見 誠(いなみ まこと)1963年、大阪・東大阪市生まれ。89年に大阪サンスポに入社。大相撲などアマチュアスポーツを担当し、2001年から阪神キャップ。03年には18年ぶりのリーグ優勝を経験した。現在は大阪サンケイスポーツ企画委員。春季キャンプガイドへ