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昨季まで台湾・統一でコーチ務めた玉木朋孝氏「簡単に勝てる相手ではない」 侍J1次R初戦の強敵を分析 - スポニチ Sponichi Annex 野球
台湾野球を熟知する男が、侍ジャパン連覇への鍵を握る相手を分析する。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)1次ラウンド初戦で台湾と戦う侍ジャパン。昨季まで3年間、台湾プロ野球・統一の内野守備巡回コーチを務め、現在は社会人野球・サムティの野手コーチとして指導にあたる玉木朋孝氏(50)が6日に発表された台湾の最終ロースター30選手について語った。
投手は16選手中、13選手が初めてのWBCとなる。最大の警戒感を示すのは日米複数球団の争奪戦の末、3年15億円(推定)の大型契約でソフトバンクに入団した徐若熙(シュー・ルオシー)だ。「アメリカでやっている選手は正直、分からない選手もいますが、投手のメンバーを見たときに最も手強いと感じたのは徐若熙でした。私が台湾で見た中で、球の勢いは一番。台湾の投手としては希少な“落ちる系”の球も持っていますし、変化球の精度も高い」徐は2019年のドラフトで味全に入団。23年に台湾シリーズのMVPに輝いた。最速158キロの直球を武器にする本格派右腕で制球力も高い。高いレベルの完成度を持つ投手だけに攻略は困難だが「短いイニングなら、攻略は難しいかもしれない。ただ先発で長いイニングを投げようとしてペース配分を考えると、球威が多少、落ちるケースがある」と経験を基に話す。徐に加え、昨季、台鋼で60試合に登板し、5勝5敗30セーブ、防御率1.79で台湾プロ野球のセーブ王に輝いた24歳の林詩翔(リン・シーシャン)も警戒する。「昨季、大ブレークして成長力と勢いがある投手。直球は150キロに迫ってくるし、フォークボールも持っている。初見ではなかなか捉えるのが難しいので、日本としては、彼が出てくる前に勝負を付けておきたいところです」と言う。台湾の投手にはフォークボールなど縦の変化を持つ投手が少なく、慣れていない分、捕手のブロッキング技術なども日本と比べると、多少落ちる点があると言う。捕手は前回も出場し、24年プレミア12で優勝に貢献した吉力吉撈鞏冠(ギリギラウ・コンクアン)が3選手の中では実績、経験とも上。「彼はとにかく打撃がいい。ただそれを優先すると、盗塁阻止率などは落ちる可能性がある。DHで使う可能性もあると思うので、他の2捕手の守備力を大会前までに、確実に見極めないといけないですね」とバッテリー間のわずかなほころびを突く重要性を口にした。打線の軸はレッドソックスなどでMLB通算235試合に出場し、20本塁打を記録。24年から富邦に加わった張育成(ジャン・ユーチェン)内野手。24年プレミア12で大会MVPに輝き、同年オフに台湾プロ野球史上最高額の10年総額2億台湾元(約9億円=当時)で統一と契約延長した陳傑憲(チェン・ジェシェン)外野手、さらに今季から西武でプレーする林安可(リン・アンコー)外野手が得点源となる。玉木氏は陳と林の2選手と統一で3年間、ともに戦った。「張はメジャーから帰ってきてから故障がちでフルシーズンを戦えてはいないですが、やはり“ツボ”を持っている打者。基本的にはローボールヒッターで、変化球を捉えるのは凄くうまい。一発狙いのようなスイングをするケースも多く、弱点があるとすれば、内角の速い球ですが、これも中途半端な球速ならスタンドまで持っていく力がある」右の長距離砲の張と対照的なのが左打者の陳だ。「去年は調子が悪かったですが、センターからレフトを中心に打ってくる打者で、バットコントロールがいい。修正能力もあるので、WBCにキッチリと合わせてくるでしょう。チームでは主将も務めていて信頼されていましたし、人間性も優れている。チームをまとめる能力もあります」。岡山・共生高校出身。プレミア12の活躍を受け「街中でも、テレビのCMでも彼の顔を見ない日はなかったですよ」と台湾の“英雄”となったが、謙虚な性格は変わらなかったという。玉木コーチも日本語で「台湾のレベルはどうですか?」など聞かれ、熱く野球談議に花を咲かせたこともある。林も謙虚で真面目な人間性が、成長につながったという。「ゾーンの出し入れを重視しないと、簡単には打ち取れない。基本的には長距離打者ですが、追い込まれたらファールで粘ることもできるし、打撃を変えることもできる」と評価する。24年シーズン中、不調のあえぐ林にアドバイスを求められ「ツイスト気味に打ってみたら」と応え、実践した林は試合で右中間スタンドに弾丸ライナーを打ち込んだという。「素直な選手なので、考え方の柔軟性もありますね。そういうタイプなので、初見の投手に対する対応力がある」と警戒すべき打者の1人に位置付ける。ノックの達人として、数々の内野手の守備力を強化してきた玉木氏。1点を争う展開になったとき、最大に警戒しなければならない選手に前回大会にも出場した中信兄弟の江坤宇(ジャン・クンユー)を挙げた。「彼のショートの守備は抜群です。守備範囲が広いというよりは、安定感が最大の持ち味。打球を捕ってからの送球ミスなどは、まずないので、投手も首脳陣も安心して任せられる選手だと思います」。江は20年から台湾プロ野球で5年連続ゴールデングラブを獲得している守備の達人。接戦で力を発揮するタイプの選手だという。台湾内からは特徴のある選手が選出された。米国、日本など海外の野球を学び、成長を続けるナインがそこに彩りを加える。侍ジャパンはWBCで台湾に負けたことはないが、24年プレミア12では0―4の完敗で国際試合の連勝を27で止められた。「台湾はプレミアの優勝から特に若手の育成に力を入れてきています。全体のレベルも上がってきていますし、そう簡単に勝てる相手ではないです。当時のメンバーが今回も主力になるでしょうから、経験値もある。それに初戦は特に何が起こるか分からないので、最大限の警戒が必要でしょう」。世界一連覇へ、スタート地点に大きなヤマ場が控えている。◇玉木 朋孝(たまき・ともたか)1975年(昭50)6月13日生まれ、東京都出身の50歳。修徳(東京)から1993年ドラフト3位で広島に入団。広島、オリックスでプレーし、05年に現役を引退した。翌06年から広島でスコアラーなどを務め、11年に2軍守備走塁コーチに就任。15年から1軍内野守備走塁コーチとなり、16年からのリーグ3連覇にも貢献した。22年シーズン後に広島を退団。23年から台湾プロ野球・統一で2軍守備走塁コーチ、野手総合コーチなどを務め、昨季は内野守備巡回コーチとし3年連続となる前期優勝に貢献した。ノックの名手として、菊池涼介、田中広輔、小園海斗など数々の内野手の守備力を強化。今季から社会人野球・サムティの野手コーチに就任。