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【元虎番キャップ・稲見誠の話】具志川で過ごす契約最終年…「虎視眈々」から無失点発進の阪神・西勇輝、この先何が待ち受ける?
22日のヤクルト戦の三回、2番手で登板した阪神・西勇輝=ANA SPORTS PARK 浦添(撮影・水島啓輔)阪神・西勇輝がヤクルトとのオープン戦(浦添)に2番手で登板した。1軍マウンドは1試合登板に終わった昨年4月12日の中日戦(甲子園)以来。結果は1回1安打1四球無失点。2死二塁から右前打を浴びたものの、高寺望夢の好返球で二走が本塁憤死。貫禄のピッチングとは言えなかったが「底辺からは抜けたかなって感じはありますね」と安堵の表情を浮かべた。例えば岩崎優、岩貞祐太、高橋遥人、畠世周、大竹耕太郎、湯浅京己らは、キャンプ途中で宜野座に呼ばれた。野手では梅野隆太郎が脱具志川組だ。阪神は今季も春季キャンプで1、2軍の呼称は使わない。そんな状況で具志川スタートの主力は徐々にペースを上げて宜野座合流のパターンが多い。ただプロ18年目の西勇は別だ。右膝の「靭帯がない」と告白した35歳が若手に交じって、汗を流している。「藤川監督からも焦るな、と言われたんで、丁寧に、繰り返して。慌てなくていい、と言われたんで。そこを信じて。監督もいいボール行ってる、って言われたので」とにかく必死。そして立て板に水のごとく、よくしゃべる。この辺りは虎将と一緒だ。「毎年、勤続疲労ってあるわけで。痛いのは絶対付きもの。指だったり、肘だったり、足首だったり、股関節だったり。それは絶対出るわけやし、だから、ごまかしながらやるのがプロなんですよ。もうこれ以上投げられないっていう時期が、一回壁にぶつかって。投げられなくて、さまよって。もう一回、この年齢でも、もう一回できるみたいな。虎視眈々に、丁寧にやります」13日には計160球を投げた。20日は休日返上で80球。球数16だった22日のヤクルト戦では登板前、登板後の投球合わせて約150球。「今しかできないので調整をして、不安が自信に変わっていければいいかなと思います。ブルペンでも一番投げている自負がある。しっかり安心してマウンドに上がれるように頑張っていきたいです」。多弁に雄弁が前途洋々の証しならいい。しかし明るい未来が待つとは言い切れないのが実情だ。本人の言葉を借りれば「虎視眈々」と復活を狙う日々。その視界に何が入るのか。1軍のレベルの高い先発投手6枠に加われるのか。現実味に乏しい。村上頌樹、才木浩人、高橋遥人、大竹耕太郎らとのローテーションの一角に「西勇輝」が入る景色が浮かんでこない。それが現実。だからつらい。石井大智の左アキレス腱断裂から、昨季以上に虎将は選手に「健康」であることを求めている。西勇も当然、故障は御法度だが、投げ込んで不安を取り除くしかない状況とあって、ギリギリの調整が、これからも続く。「無事之名馬」だとしても、1軍先発のチャンスが巡ってくるとは限らない。それほどレベルは高い。今季の阪神は、NPB最多の10人の年俸2億円以上選手を擁する。現状維持の推定年俸3億円で契約を更改した西勇も〝十人衆〟の一員だ。そして契約最終年…。大減俸なら、まだマシ。契約延長があるのかどうか。人生をかけたシーズンだ。虎が獲物を狙うがごとく、鋭い視線で機会をうかがうーだから虎視眈々という。「ブルペンで球数を重ねながら、目をつぶってでも投げられるくらい、自信を取り戻していきたいですね」以前は目を閉じても白球を操って、投げられていた…。こんなコメントからも西勇輝の高いプライドがのぞく。年齢、時の流れとの戦い。誰よりも強い矜持だけが、抗える武器となる。■稲見 誠(いなみ まこと)1963年、大阪・東大阪市生まれ。89年に大阪サンスポに入社。大相撲などアマチュアスポーツを担当し、2001年から阪神キャップ。03年には18年ぶりのリーグ優勝を経験した。現在は大阪サンケイスポーツ企画委員。春季キャンプガイドへオープン戦日程へ