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【内田雅也の追球】新庄―球児の夢を見る - スポニチ Sponichi Annex 野球
エナジックスタジアム名護でのオープン戦試合前だった。前阪神OB会長の川藤幸三が日本ハム監督・新庄剛志に近づき、話し込んでいた。20分以上の長話だった。
新庄が西日本短大付高からドラフト5位で阪神入りした1990年、川藤はコーチだった。36年前である。当時は27歳でトラ番キャップを任されていた。川藤41歳、新庄18歳だった。懐かしい。「えらい長いこと話したで」と記者席に戻ってきた川藤は言った。「ええチームになったなあっちゅう話よ」「BIG BOSS」で監督に就いて以来、6、6、2、2位と最下位チームを優勝争いできる位置まで引き上げてきた。毎年1年契約を更新している。川藤は「もう、あとは優勝しかないわな。“優勝せんと辞められへん”ちゅうような話もしとったよ」と、会話の中身を打ち明けた。試合は阪神が日本ハムに押される形だった。もちろん、オープン戦であり、結果や勝敗は二の次三の次だが、目につくシーンはいくつかあった。1回表先頭、近本光司が先発・達孝太の初球、速球を右前にはじき返した。前日のヤクルト戦(浦添)に続く初回先頭初球攻撃で、近本の狙いが見えた気がする。2回裏1死一、三塁、日本ハム新外国人ロドルフォ・カストロは2ストライク後に食らいつき、緩い三ゴロを転がして先取点を奪った。新庄が目指す姿勢ではないか。今朝丸裕喜が4回裏も続投し、強打のフランミル・レイエスを101キロスローカーブで空振り三振に取ったことは自信になったはずだ。スコアはともかく、見どころはあったわけだ。川藤は試合前、先発メンバー表交換で新庄と阪神監督・藤川球児が笑顔で会話し、ハイファイブを交わしている光景を見ていた。「あの2人が日本シリーズで相まみえる。それは(藤川が監督に就いた)去年から思っていたこと。阪神ファンも含めての願望やな」確定申告の合間、そんな夢を見ている。<春こそは>とピュリツァー賞受賞の野球記者、ジム・マレーが書いている。<大地の氷が解け、木々が芽吹き、所得税を納め、そしてすべてのチームが優勝を夢想する季節>。夢見るころを過ぎても夢は見たい。恥ずかしくも打ち明ける。阪神―日本ハムの日本シリーズが見たい。 =敬称略= (編集委員)