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【内田雅也の追球】「うりずん」の雨と姿勢 - スポニチ Sponichi Annex 野球
阪神キャンプ打ち上げの沖縄・宜野座村に雨が降った。連日の晴天で乾いた大地を潤すように、日々練習の心と体をいやすように降った。
「うりずん」という好きな琉球言葉がある。2月下旬から4月下旬(旧暦2~3月ごろ)、大地に潤いが戻り、若葉が芽吹く季節を指す。1年で最も心地よいとされる。冬の乾燥期を終え、植物が生き生きと活発になる時期を意味する。いまの阪神ではないだろうか。耕運機や攪拌(かくはん)機、ローラ機などのグラウンド整備の機械がクレーンでコンテナに積み込まれた。1月下旬にやって来た彼らは2泊3日の船旅で帰っていく。ピッチングマシンの多くは既に船の中で、甲子園や尼崎を目指している。人も機械も皆、南の島から帰っていく。「こんなに雨のなかったキャンプも珍しいですね」と阪神園芸甲子園施設部長の金沢健児が話していた。何しろシートをほとんど敷かなかった。好天続きはありがたいが、金沢は甲子園のグラウンド状態が気になっていた。何しろ記録的な少雨だ。1月は粉雪が舞ったが降水量はほぼ0ミリ。昨年クリスマスに降ってから、まとまった雨は2月10日の10ミリだが、居残り組に電話で確認すると「水はほとんど抜けています」。この日甲子園にも降った雨は慈雨なのだ。それでも「今年1年のグラウンド状態を左右するのは、これからですね」と金沢は言った。阪神も同じだ。監督・藤川球児はキャンプ総括会見で、採点を「シーズンが終わった後に点数はつく」、収穫を「終わるまで分かりません」と答えていた。目指すは「一番高い所」で、いまはその準備。経過より結果だけを目指している。これまで幾度も書いてきたが、勝負の世界は「一寸先は闇」だ。セ・リーグ優勝候補筆頭、連覇濃厚といった下馬評は慢心や油断につながる。だから、藤川は「没頭」「黙って積む」をテーマに掲げていたのだろう。開幕に向け、藤川は「ベンチの背もたれに背中をつけない、前向きな姿勢は貫けている」と言った。近鉄担当だった1987(昭和62)年、新外国人ベン・オグリビーが「背中をつけるな」とベンチでの選手の姿勢を正していたのを思いだす。元大リーグ本塁打王は戦う姿勢を説いていた。そんな厳しい日々に、雨音がやさしく響いていた。=敬称略= (編集委員)