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【内田雅也の追球】変わろうとする光景 - スポニチ Sponichi Annex 野球
阪神監督の藤川球児が球団特別補佐(SA=スペシャルアシスタント)だった2021年、NHKのテレビ解説で語っていた。ある阪神新外国人投手について「落ちる球がないのならフォークボールを覚えたらいい。新しい球種を日本で学べますよ。できますよ。化けますから」と話した。
この話を思いだしたのは、今季の新外国人投手カーソン・ラグズデールが今まさに、フォーク(あるいはスプリッター)習得を目指す光景を目の当たりにしたからだ。2月23日に日本ハム戦(名護)でオープン戦に初登板し2回1安打1失点。ただ、野村佑希に1ボール―2ストライクから四球、吉田賢吾に0―2から計6本のファウルで粘られ11球目を右前打された。追い込んでからの決め球を欠いていた。カーブ、スライダーと横の変化はあるが、縦の変化に乏しいと感じた。記者席で見ていた亀山つとむ(本紙評論家)に聞くと同意見だった。この時に藤川解説を思いだし、スコアシートにメモした。すると翌24日、早くも動きがあった。宜野座サブグラウンドのベンチでラファエル・ドリスからフォーク(スプリッター)の握りや腕の振りを聞いていた。キャンプ打ち上げの25日はドームでドリスの教えを受けながらフォークを投げていた。27日の甲子園でも同じ新外国人イーストン・ルーカス相手にバッテリー間の距離で投げていた。思えば、12日にライブBP(打者相手の投球)を終えた際、フォークも持ち球の一つとしたうえで「落ちる球を上手に操る投手がたくさんいる。ぜひ、いろんな意見を聞いて、教えてもらいたい」と話し、向学心を示していた。宜野座で前OB会長の川藤幸三も「日本で成長する余地、姿勢があるんやないか」と話していた。2メートル3の右腕。27歳。米国ではマイナーリーグ5年、主に先発で21勝22敗。357回1/3で442三振を奪っているが、当てるのがうまい日本人打者相手では空振りを奪うのも苦労しよう。同じく1メートル98の長身右腕だったランディ・メッセンジャーも2010年の来日当初は縦の変化に乏しく苦しんでいた。それが縦割れのカーブを覚え、フォークを磨いて大エースに成長している。ラグズデールはフォークで変わろうとしている。変身する過程を見ていきたい。 =敬称略= (編集委員)