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【内田雅也の追球】必勝継投の「サクランボ」 - スポニチ Sponichi Annex 野球
英語に「チェリー・オン・ザ・ケーキ」(ケーキの上のサクランボ)という表現がある。英英辞典によれば「何かを完璧にする最後のもの」という意味だ。日本で言えば、ショートケーキのイチゴか。「画竜点睛(てんせい)」の最後の「点」である。
野球で言えば、リードを守り抜く終盤の救援投手だろう。大リーグには古く「野球では最後の6つのアウトを取るのが最も難しい」という警句がある。8回セットアッパー、9回クローザーの重要性を示唆している。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準々決勝でカナダに追い上げられたアメリカが2点差で逃げ切れたのは8回ギャレット・ウィットロック(レッドソックス)、9回メイソン・ミラー(パドレス)と「最後の6アウト」を奪える投手がいたからである。近年で言えば、7、8、9回、いや6回からの継投確立が勝てるチーム作りの根幹となる。3・27開幕まで残り2週間を切り、阪神は今季の勝ちパターン継投を固めてきたようだ。この日の広島戦(マツダ)での6回湯浅京己、7回及川雅貴、8回ダウリ・モレッタ、9回岩崎優という継投は10日西武戦(甲子園)と全く同じだった。本番に向けて、本人はもちろん、チーム全体に役割を認識させるかのような起用に見えた。湯浅は失点はしたが、150キロ台の速球は生きており、変化球も低めを突いている。及川、モレッタ、岩崎はオープン戦で依然防御率0・00。順調に調整を続けている。現役時代、セットアッパーもクローザーも経験した監督・藤川球児は終盤継投の重要性を強く知る。この日試合後も「まあ、みんな健康であることですね。とにかくね。はい。もう時間が迫ってきてますのでね」と、あまり語らなかった。ただし、頭の中ではケーキの上にどんなサクランボをどう乗せようかと考えているだろう。目星がついてきたようだ。最後に別の話。3回に左翼へオープン戦2号2ランを放った中川勇斗。本塁打の後の打席が目をひいた。6回は先頭で中前打、7回は無死三塁で右前適時打。一発の後でも強引にならずに低く強い打球を放っていた。豪快なスイングが持ち味だが、むちゃ振りの「フリー・スインガー」ではない。ドラフト7位、プロ5年目、新人王の資格もある。 =敬称略= (編集委員)