サンスポ
【元虎番キャップ・稲見誠の話】阪神2軍の開幕4番は梅野隆太郎…34歳男の職場って、ここなのか?
阪神・梅野隆太郎1リーグ3地区制に再編された「ファーム・リーグ」が14日、開幕した。オリックス、広島、ソフトバンクとの4球団で「西地区」を形成する阪神は由宇(山口県岩国市)でカープと対戦した。記念すべき新リーグ初戦の4番を任されたのは2014年D4位入団の梅野隆太郎だった。DHで出場し、二ゴロ、右飛、敵失、空振り三振で4打数無安打。大竹耕太郎が先発投手でもマスクをかぶることなく、スタメン捕手は栄枝裕貴だった。同日、1軍はマツダでの広島とのオープン戦に挑んでいた。捕手のスタメンは嶋村麟士朗。次の誕生日で23歳になる若者と35歳シーズンを迎えた百戦錬磨の経験者。前者は契約金1000万円、年俸420万円(金額はいずれも推定。以下同)で育成から支配下に昇格したばかり。4年契約が終わった後者は4000万円減の年俸1億2000万円の単年契約を結んだ。420万円と1・2億円…ベテランの高給取りは試されることなく、この日を迎えてしまった。伏線はあった。藤川球児監督による2月27日のサプライズ発表だ。「それでは2026年、今日から1カ月後、3月27日の東京ドーム、読売巨人との開幕投手を発表します。どうぞ!」。自作自演の芝居がかったセリフから村上頌樹を指名した。同時に「坂本とコンビで、いい1年になりましたので、今年もこの2人でいきます」と発言。指揮官の言葉通り、開幕までちょうど1カ月。何が起こるかわからない状況で、梅野は「開幕スタメンマスク」を断たれた。14年の新人イヤーから12年連続して開幕1軍だけは譲らなかった。しかし、ここ数年は状況が一変した。意外な速さで下降線をたどった。18年から3年連続してゴールデン・グラブ賞を獲得しながらも、矢野燿大監督の評価は今ヒトツ。坂本誠志郎の起用が一気に増えた。岡田彰布政権では才木浩人の登板時で先発を任されるなど、まだ居場所はあった。しかし藤川監督の就任で、坂本重視の状況はさらに進んだ。52試合出場で打率・220。26安打で0本塁打2打点。かつての不動のレギュラー捕手は面影は完全に失せていた。今年に入り、育成の嶋村起用が続き、梅野の存在感は薄れるばかり。オープン戦は2月22日のヤクルト戦(浦添)の1試合のみ。世代交代という決断のハリは確実に、そして冷酷に、時を刻んでいた。坂本、新加入の伏見寅威、栄枝の3人制で開幕を迎える可能性は濃厚。外野起用が続く捕手登録の中川勇斗もいる。なかなか梅野までたどり着かない。それが現状だ。それにしても、ここまで明確に新旧交代が進む例は珍しい。実績者に機会を与え、結果が出せないのを待って、指揮官は決断する。これが通常のパターンだとすれば、今回は異例。梅野と同じような扱いを受けた糸原健斗、木浪聖也は14日の広島戦に出場した。これでダメなら開幕2軍は仕方がない。梅野の場合は機会すらなかった。担当記者から右脚肉離れのD1位・立石正広の開幕1軍に関する質問は飛ぶが、梅野は誰も聞かない。よほどのことがない限り、逆転開幕はない。置かれた立場を理解し、現実を受け止め、黙って、野球をするしかない。何より指揮官の評価が「正解」だと認識するしかない。確率は少ないだろうが、新たな可能性が生まれることだって考えられる。いずれにしても阪神ファンは見ている。熱心であればあるほど「晩年」に足を踏み入れた梅野が、どういう姿を見せるのかに興味を覚えて視線を送る。辛い日々は続くが、それだけは間違いない。■稲見 誠(いなみ まこと)1963年、大阪・東大阪市生まれ。89年に大阪サンスポに入社。大相撲などアマチュアスポーツを担当し、2001年から阪神キャップ。03年には18年ぶりのリーグ優勝を経験した。現在は大阪サンケイスポーツ企画委員。オープン戦日程へ