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侍ジャパン・源田壮亮に憧れる韓国の23歳が代表の正遊撃手となって過ごしたWBC - スポニチ Sponichi Annex 野球
【室井昌也コラム 月に2回は韓情移入】
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)韓国代表のショート金周元(キム・ジュウォン=23)は侍ジャパンの源田壮亮(33)に憧れている。中学生の頃から源田の守備動画を繰り返し見てきた。その思いについては2024年プレミア12の時に他媒体のコラムで記したことがある。その後、金周元は大きく飛躍した。プロ5年目の昨季、全144試合に出場し打率・289、15本塁打、リーグ2位の44盗塁を記録。KBOリーグのベストナインにあたるゴールデングラブ賞と守備賞の両方を遊撃手部門で獲得した。プレミア12では控えだったが、今回のWBCでは正遊撃手の座をつかんだ。2月の沖縄での代表合宿。金周元はこう口にした。「東京ラウンドで源田選手のところに一緒に挨拶に行ってもらえたらと思うのですが」。「日本戦の試合後に行きたい」と言った金周元。侍関係者にその旨を尋ねると「相手選手とのやり取りはだいたい試合前」とのこと。だが金周元としては「日韓戦」の前に面識のない年上選手のところに自ら出向くのはハードルが高く、試合前後の挨拶は断念した。3月7日、東京ドームでの対戦。金周元は試合中に源田と思わぬ形でつながった。2回裏日本の攻撃、源田の打球はセカンドベース寄りに守っていたショート金周元の右に転がった。「とても不思議な感覚でした」。そう振り返った金周元は源田が放ったゴロを難なくさばいてアウトにした。4回裏、源田は四球で出塁し二盗を試みた。判定はアウト。日本側からリクエストがあり源田は二塁塁上に留まった。試合中ではあるが判定が下るまでの間は両チームの選手が言葉を交わすタイミングでもある。その時、源田を韓国選手2人が囲み談笑した。外野手の李政厚(イ・ジョンフ)と安賢民(アン・ヒョンミン)だった。金周元は判定が下るのをファールライン際で待っていたためその輪には加われず、アウトの判定が下るとベンチに下がった。金周元は源田が打席に入ると、レフトのジャマイ・ジョーンズに守備位置を指示した。誰よりも源田の打球方向を知っているからだ。源田と同じグラウンドでプレーする夢を叶えた金周元は試合翌日、「自分が塁に出た時に源田選手に挨拶はできました」と言って軽く笑みを浮かべた。マイアミでの準々決勝ラウンド。ドミニカ共和国戦前の打撃練習中、金周元はひとりだけノックを受け続けていた。ノックバットを握るのは金周元のプロ入団時、所属チーム(NC)の監督だった李東イク(イ・ドンウク)守備コーチだ。「(東京とマイアミの)時差の影響で体のリズム感が良くなくて、長めにノックをお願いしました」(金周元)。額から落ちる汗を拭いながらそう答えた金周元。その準備が実を結ぶ。2回裏ドミニカ共和国の攻撃、0―1での1死三塁。7番フリオ・ロドリゲスの打球は前進守備の金周元の横、三遊間を抜けようかという打球となった。それを金周元は横っ飛びで抑えて一塁に送球。三塁走者はホームに還ったがアウトを一つ取った。変わらぬ思いと重ねる努力。憧れるのはたぶんやめなくてもいい。