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【馬淵史郎 我が道29】バント練習は打撃にも生きる - スポニチ Sponichi Annex 野球
春夏合わせて甲子園には39回出場させていただいた。歴代1位だという。90年(平2)の明徳義塾監督就任時には「せっかく監督をさせてもらえるなら、一度は出たい」と思っていた甲子園にこれだけ多く出ることができたのは、幸運なことだと思う。1回出たら2回、30回出たら31回行きたくなる場所。それが甲子園だ。
全国の高校野球の球児たちが目標としてきた甲子園で、歴代4位の55勝を記録し、02年(平14)夏には全国制覇も経験できた。だが、長く監督をしてきて感じるのは「勝ちは偶然、負けは必然」という言葉だ。勝つために毎年毎年、選手たちと苦しい練習に取り組んできた。体力も精神力も全てを注ぎ込む。だが、勝負というのは、頑張ったから必ず勝てるというものではない。こうすれば勝てるという甲子園必勝法というのは存在しない。逆に準備が足りていなかったら、まず勝てない。それが野球だ。野球というゲームは小さいことの積み重ねだ。練習では0・1秒の重みを選手に伝えているが、小さいことをいかに大切にするかで強いチームはつくられる。特に甲子園という舞台では小さいミスが勝敗を分ける。やはり普段からの練習が一番大事になる。甲子園に出ることを目標にした練習ではなく、甲子園に出て、さらに勝つための練習ができるかどうか。これは苦しく、厳しい。だからこそ、勝った時の喜びは格別なのだ。一方で野球は四分六でも勝てるスポーツだ。強い相手でも、しっかりと作戦を立て、相手の戦力、弱点を調べて対策すれば、勝機はある。戦力的に三対七でも四分六にした上で、最後は五分五分で戦えるように準備する。甲子園55勝はそうして築いてきた。小さいことで重視しているのは、やはりバントだ。「3アウトで攻撃が終わるのに、バントでアウトを与えたら損」と考える人もいるが、甲子園に出てくる代表チームには簡単には勝てない。接戦に備え、1点を確実に取ることが必要だと自分は考える。東京から高知より、大阪から高知の方が近い。一塁から二塁、二塁から三塁へと本塁に近づいてこそ、得点の可能性は高くなる。バントも初球からしちゃいかん。1球目がストライクでも引いて見逃し「何かやってくるのでは」と相手を警戒させる。ボールだったら、次も見逃す。一球でも多く相手に投げさせることが、終盤に生きてくるのだ。13年(平25)夏は瀬戸内・山岡泰輔(現オリックス)を攻略するために、全ての打撃練習をスライダーをバントすることだけに切り替えた。「打って勝とうと思うな」とバントを繰り返したからこそ、高速スライダーに対応できた。やればやるだけうまくなるのがバントだ。大事なのはタイミングと目線。バントができれば、打撃も良くなるのだ。◇馬淵 史郎(まぶち・しろう)1955年(昭30)11月28日生まれ、愛媛県八幡浜市出身の70歳。三瓶高―拓大。83年に社会人の阿部企業で監督に就任、86年に都市対抗初出場、日本選手権で準優勝。90年から明徳義塾の監督に就任、02年夏の甲子園で優勝。監督として甲子園通算39回出場(春17回、夏22回)は歴代1位。甲子園55勝は歴代4位。23年には日本代表監督としてU―18W杯優勝を果たした。