日刊スポーツ
【カーブ番コラム】今季初黒星直後に認めた敗北感と翌日に明かした葛藤に見た、床田寛樹の変化
潔く負けを認める姿に驚かされた。昨季大きく負け越した阪神との今季初対戦となった3日、広島の床田寛樹投手(31)は6回2失点と粘投しながら、今季初黒星を喫した。クオリティースタートを記録し、先発として最低限の役割は果たしたとも言える内容ではあった。だが試合後、報道陣に囲まれた床田の口から出てきた言葉は、自らの投球を肯定するものではなかった。「村上との差がだいぶあるなと。勝負どころで間違えないじゃないですか。やっぱり、勝てるピッチャーって、ああいうふうなんだなと改めて思いました」敗戦直後、阪神の凱歌(がいか)が漏れ聞こえる通路で、静かに胸の内を明かした。試合直後で、投手戦の余韻が残るタイミングだった。それでも、はっきりと敗北を認めた相手は、痛打された打者ではなく、投げ合った相手投手に対してだった。プロのトップアスリートにとって、相手との差を認めることは簡単ではない。だが、床田は「勝負どころでの1球の差。その差がすごく大きい」と言い切った。自身の現在地を見つめ、その差を埋めるべき課題として受け止めていた。床田は昨季、3年連続2桁勝利を逃し(9勝12敗)、チームも2年連続Bクラスに終わった。何かが足りない-。まだ今季2試合目の登板ではあったが、その現実をまざまざと見せつけられた。そんな思いだった。一夜明けても、その思いは変わらない。ただ、冷静さを取り戻す中で、異なる感情も芽生えていた。「そう思ったのは間違いないんですけど、チームのことを考えると、メディアの前で言うべきじゃなかったのかなとも思ったんです。相手投手に負けを認めるようなことを言うべきじゃなかったのかなと…」自身の率直な言葉を、今度は自ら省みる。そこには、単なる一投手ではなく、チームを背負う立場としての葛藤がにじんでいた。今季初めて開幕投手を務め、「1年間引っ張っていく」という責任を背負ったからこそ生まれた変化だろう。潔く負けを認める強さと、その発言を悔いる責任感。床田の中で、個からチームへと視点が移り始めている。投手として、殻をひとつ破る契機になり得る。そんな予感を抱かせた。【広島担当 前原淳】