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【内田雅也の追球】初球から勝負の連打 - スポニチ Sponichi Annex 野球
阪神5回表の3点は2者連続で初球を打った適時打だった。2死一、二塁から中野拓夢は外角寄りカットボールを中堅左に先制二塁打。二、三塁となり森下翔太は速球を弾き、遊撃右をゴロで破る中前2点打した。
初球について考えてみる。中野を迎えた時点で中日投手コーチ・山井大介がマウンドに駆け寄り、高橋宏斗に助言を与えていた。何と言ったかはわからないが、重要局面と誰もがわかっていた。何度か書いてきたが、初球は打者有利のカウントである。統計上、カウント別打撃成績で最高打率、あるいは1ボール―0ストライクに次ぐ高打率を残している。<実は0―0は投手が不利なカウントなのである>と長年、阪神のスコアラーを務めた三宅博は著書『虎の007 スコアラー室から見た阪神タイガースの戦略』(角川マガジンズ)に書いている。<観察することができないので打者の狙いが読みづらい>。ならば、どうするか。野村克也は『野球論集成』(徳間書店)で<初球は難しい>としたうえで<慎重かつ大胆に入るべきだ>と記している。野村がよく伝えた「ボール球から入る」というのはこの一環だった。十分に注意を払っていたはずの中日バッテリーだが、初球から堂々攻めてきた。今季、高橋の初球成績は6打数3安打だったが、真っ向勝負を挑んできたわけだ。打者側はどうか。中野は今季初球に3打数2安打、森下は2打数2安打と結果を残していた=数字は11日現在=。ただ、打球として残った結果が好成績なわけで、積極性だけで打ちにいけば、ファウルや打ち損じがある。これまで書いてきたように「心は熱く、頭は冷静に」の姿勢がいる。力まず打ち返した集中力と平常心をたたえたい。さらに得点にはならなかったが、続く佐藤輝明も初球、外角高め速球を左越え二塁打を放った。つまり3者連続で初球を快打したことになる。今季の初球ストライクゾーン%(初球ストライクが来る確率)を見ると、森下は44・4%でリーグ17位、佐藤輝は44・1%で同20位と低い。好調な3、4番に相手投手はより慎重になっている傾向が見える。それでも高橋は初球から勝負に来た。見応えのある真っ向勝負に勝ったのである。 =敬称略= (編集委員)