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【元虎番キャップ・稲見誠の話】「突破口が見つからない」から「今年初めて貢献」阪神・前川右京、他人バットより、手に残る感触が道しるべ
10日の中日戦での適時二塁打でガッツポーズを見せる阪神・前川右京「結果が出ていないので、そこがすべてかなと思います」「バッティングって難しいですね。昨年からスッキリできていない。なかなか突破口が見つからないというか、難しいかなという感じです」ここまで、はっきり言って大丈夫なのかと思わず、心配してしまった。「7番・左翼」で今季初スタメンだった9日のヤクルト戦(甲子園)は一ゴロ、四球、空振り三振。試合後の阪神・前川右京の〝無防備コメント〟がこれ。誰よりもホンネを隠す藤川球児監督が聞けば、どう思うのか。自信のなさをさらけ出していいのか。即2軍降格なのでは…とまで思ったが、一夜明ければ、笑顔がはじけた。場所をバンテリンDに移しての中日との初戦。1点差に迫った後の九回2死一、三塁。右翼線に弾き飛ばした打球は敵失も誘って、〝逆転2点二塁打〟となった。「めっちゃ緊張したんですけど。初球から腹くくって行けたんで、結果が出て良かったです。昨日全然ダメで、今日チーム貢献できたんで、今年初めて貢献できたんで、嬉しかったです」さらに、こうも話した。「お父さんと、おばあちゃんも来ていたんで、本当に良いヒットを見せられたかなと思います」。奈良・智弁学園高から2022年D4位入団の5年目。5月の誕生日で23歳となる。同期のD7位・中川勇斗(京都国際高)は開幕1軍を射止めたが、前川は3年ぶりの2軍スタート。5度の登録ー抹消を繰り返した昨季は4月の14試合連続安打後に失速。調子が上向くことなく、ファーム発進となり、冒頭の「突破口が見つからない」状況に陥ってしまった。「良いモノをもっているのに、もったいない」。阪神ファンのほとんどが、前川に抱く感情だろう。それに加えて、いつも「試行錯誤」。誰かにアドバイスを求めて、頼っている…個人的には、そのようなイメージだ。岡田彰布オーナー付顧問は「もうはっきりしてるやん。コロコロ変わりすぎよ、スイングとか。もっと自分はこれやいうのは、つかまなアカンわ」と〝前川像〟を表現。事実、今回も2軍でともに過ごした梅野隆太郎のバットを拝借した適時打だった。前川だけが特別ではないことも、繊細で微妙な感覚だとは理解できるが、未だに最高の商売道具と巡り合えない。昨季は2軍調整中にソフトバンク・近藤健介に助言を求めた。オフは中日・岡林勇希と時間を過ごした。いつも誰かに教わっている。研究熱心とは一概には言えないスタンスもまた〝前川像〟の側面なのかもしれない。プロ5年目。つまりD1位・立石正広内野手(22)=創価大=ら大学生ルーキーとは同学年となる。高卒入団からの4年間の中身を問われる26年シーズン。2年目の23年に初めて1軍に昇格。翌年は116試合に出場し、打率・269、4本塁打、42打点の成績を残した。不動の左翼手として臨んだ昨季から始まった暗転の〝突破口〟は、まだ見えない。二塁ベース上でのド派手なガッツポーズの翌日、左腕・大野雄大が先発ということもあり、左翼には粗さは確かにあるが思い切りの良さを秘めている中川が入った。それに引き換え、前川の場合は…。少なくも虎将評価は明らかに中川だ。3戦目はスタメンで2安打を放ち、カード3連勝に貢献。「2ストライクから2本とも打てた」と胸を張った。他球団選手に教えを求め、他人のバットを借りるのもいいが、それだけでは、前には進めない。前川を見て「船頭多くして船、山のぼる」のことわざ浮かぶ。頼れるのは自分と手に残る感触。左翼手のレギュラー争いに終止符を、その手で、打ってほしい。■稲見 誠(いなみ まこと)1963年、大阪・東大阪市生まれ。89年に大阪サンスポに入社。大相撲などアマチュアスポーツを担当し、2001年から阪神キャップ。03年には18年ぶりのリーグ優勝を経験した。現在は大阪サンケイスポーツ企画委員。プロ野球日程へ