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【元虎番キャップ・稲見誠の話】コーチ引き連れ代走コール!阪神・藤川監督の「顔色、声色、腹色」変化…部下は大変?
4月30日の神宮でのヤクルト戦の八回、阪神・森下翔太への代走を告げる藤川球児監督以前から違和感を覚えていた。タイガースだけじゃない、とわかっていても阪神ベンチの過剰反応に〝ワンマン職場〟を見ているような気がする。ボスが怒れば、まるで争うかのように、それ以上に怒る…フリをする。もちろん当事者には、そういう狙いはないのだろうが、ベンチから飛び出すシーンを目にする度に、一体何事なのかと思ってしまう。野球って、そういう部分で一致団結を示さないとダメなのか…。不思議な世界だと痛感する。ここまで書けば、阪神ファンは、象徴的なシーンを思い浮かべる。4月30日ヤクルト戦(神宮)。9-2で迎えた八回1死、木沢尚文の投球が新人・岡城快生のユニホームをかすめた。一気にヒートアップする阪神サイド。藤川球児監督が飛び出すと、和田豊ヘッドコーチ、小谷野栄一打撃チーフコーチらが我先にと前に出る。相手ベンチに厳しい言葉の刃を向ける。この行為に、どういう意味があるのか。抑止力になりえるのだろうか。投球の乱れを看過すれば、ナメられるのだろうか。〝オラオラ感〟を漂わせながら、虎将は鬼の形相になり、テレビカメラは何かを叫んだ様子をとらえていた。木沢の制球難は収まらない。続く森下翔太へカウント3-1からの5球目は頭部付近を通過した。飛び出す指揮官を先頭にコーチが両サイドを固める三角形布陣が整う。このあたりの息はぴったりだ。まるで〝教授回診〟だ。指揮官の視界に謝罪するヤクルト・池山隆寛監督の姿が入ったのか。途中から急に表情が和らいだ。そしてジェスチャーを交えながら森下の交代を告げた。部下を引き連れる形でベンチを飛び出し、代走をアンパイアに伝えるーなんて場面を見た記憶はない。しかも笑顔の将と怒り心頭のコーチ陣が鮮やかなコントラストを描いていた。何とも皮肉な光景だった。「人間には顔色と声色と腹色がある。昔からよく言われたこと。それを頭に入れておかないと…」こんな上品な表現ではなかったが、死んだ母に言われたことを思い出す。今回の、たった数分のシーンから〝3色〟が浮かび上がる。相手投手をにらみつける「顔色」。相手ベンチへの怒声という「声色」。それを見せつけられた部下は上司の「腹色」を勝手に自然に拡大解釈する。さっきより怒っているだろう…と。しかし当のボスは先頭で笑顔を浮かべていた。そこまで配下の人間は読めなかった。辛抱や我慢も「腹色」で大事な要素だ。胸の内を見せないことが勝負師に求められる条件のひとつだとすれば、藤川監督らしい行動だった。4月26日広島戦(甲子園)で近本光司が死球を受けて、「左手首骨折」で戦列を離れただけに、首脳陣が神経質になるのも理解できる。投球が打者に近づくだけでベンチを出る。それで投手の制球力が整うのなら、コーチは要らない。時代が違うとはいえ、故星野仙一氏はグラウンドでの乱闘を「兄弟ゲンカ」と表現した。一日経てば忘れる。何事もなかったかのように「家族」に戻ると、よく言っていた。首脳陣が選手を守るために、相手に詰め寄ることが悪だとは思わない。青少年の教育に悪いとも言わない。ベンチを出る行為が相手投手への誹謗中傷を加速させる、とまでは断言できない。ただ過剰な反応は、個人的には芝居がかった行為に映り、滑稽に見える。いずれにしても藤川阪神で働くコーチは大変だ。疲労困憊となった岡田彰布監督時代のコーチ陣よりも違う意味で、過酷な職場なのではないか。もし阪神投手陣が死球を与えて、戦列を離脱させてしまったら、藤川監督とコーチ陣は、どういう反応を見せるのだろうか。死球を与えない自信の表れでもあるのだろうが、〝加害者〟となる危険性を完全に排除することはできない。■稲見 誠(いなみ まこと)1963年、大阪・東大阪市生まれ。89年に大阪サンスポに入社。大相撲などアマチュアスポーツを担当し、2001年から阪神キャップ。03年には18年ぶりのリーグ優勝を経験した。現在は大阪サンケイスポーツ企画委員。プロ野球日程へ