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【内田雅也の追球】エラーしても「明日」 - スポニチ Sponichi Annex 野球
スコアボードの日章旗がセンターポールに巻きついていた。それほどよく風向きが変わった。
最後は大差がついたが8回までは接戦だった。問題は風である。0―0の4回表、2死一、二塁。京田陽太が左翼前に打ち上げたフライに福島圭音は追いつけずポトリと落ちた。そして落ちたボールを通り過ぎる格好になった。振り向いて拾い、投げた本塁送球も一塁側にそれた。二塁走者はもちろん、一塁走者まで還って2失点となった。記録は左前打(打点1)と福島に失策がついた。試合前から左翼に強い浜風が吹いていた。練習でも外野守備兼走塁チーフコーチの筒井壮がフライボールマシンを使ったり、ノックバットで高いフライを上げたり、シートノックでもフライを多めに打ったり……と対策をしていた。ただ、この風は風向きを変え、京田の打球が上がった時は左翼から一塁に向けて吹いていた。「ええ(風向きは)変わっていましたね」と敗戦後、筒井は言った。それも「2回表の1死からね」と具体的に話した。当然、選手にも注意を喚起していた。だから「それは言い訳にはできないでしょう」と話した。「準備と言うかなあ。中途半端になったのがね。まあ、これから、ちゃんとやります」。思いきりの良さが持ち味のはずの福島である。筒井の話は選手の思いを代弁するかのようだった。日本代表監督として2023年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一に導いた栗山英樹が今年1月、野球殿堂入りした際に語った話を思う。入団テストを受け、ドラフト外入団だった若手時代、ヤクルト2軍監督だった内藤博文への感謝を口にした。よく練習に付き添い「人と比べるな」と励まされた。著書『伝える。』(KKベストセラーズ)には<10個エラーしてもいい、明日9個になればいい、そう思えるようになった>と記している。同じ小柄で俊足の外野手。育成出身で2軍暮らしからはい上がった福島も栗山と似たような境遇である。しかも「また、しっかりやらせます」と寄り添う指導者もいるではないか。野球でも人生でもエラーはついて回る。プロ野球は毎日試合がある。負けても、エラーしても明日がある。比べるのは他人ではなく、昨日の自分である。 =敬称略= (編集委員)