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【元虎番キャップ・稲見誠の話】打率・116でも出番あり!捕手の生き方示す阪神・伏見寅威、〝一夫〟確保で飯食える?坂本誠志郎は…
ベンチで言葉を交わす伏見寅威と高橋遥人の阪神バッテリーチームの消化試合数は「36」。本人のスタメン出場ゲームは「13」で43打数5安打の打率・116。普通なら勝負にならない。2軍降格を通告されてもおかしくない。しかし「女房役」ともいわれる捕手は「一夫」を確保さえできれば生き残れる。阪神・伏見寅威がキャッチャーとしての生き方を身をもって実践した。バッテリーを組んだ高橋遥人が開幕5戦4勝無敗で4完封。すべてにおいてマスクをかぶった。捕手冥利に尽きる偉業だ。「今日は何もありません。スゴ過ぎました。それ以上ないです」自身から口を開いたのが6日の中日戦(バンテリンD)での試合後のこと。高橋宏斗との投手戦を2安打無四球10奪三振で制した左腕について聞かれる前に話した。こうも続けた。「(5試合の中で)一番良かったんじゃないですか? 今日は本当に何もしてないです。ただハルトがストライクゾーンにいろんな球を投げていた。それだけです」伏見は東海大から2013年ドラフト3位でオリックスに入団。22年オフには国内FA権を行使して、日本ハムを選んだ。そして昨年オフ、島本浩也とのトレードで阪神に移籍した。オリックス時代は宮城大弥、日本ハム時代は山崎福也とのバッテリーで存在感を示した。「多夫」は不要。一人でいい。相方を探して作ることが捕手としての生きる道。阪神でも高橋に巡り合えた。共通点は3人とも左腕。サウスポーとの相性がいいのだろう。ちなみに高橋登板時の打撃は無安打。リードだけでの援護…捕手としてお手本のような歩みだ。この「完封バッテリー」を坂本誠志郎はどう見ているのだろうか。昨年まで高橋の相手だった。今季は開幕後に一変し、パートナーを奪われる形となった。大竹耕太郎だって同じ。会話を重ねながらコミュニケーションを図って、白星を2人で稼いできた。しかし2日の巨人戦(甲子園)では伏見がマスクをかぶって、7回1失点勝利を導いた。坂本は大竹の前回登板では7回零封白星をサポートしたにもかかわらず、ベンチスタートとなった。坂本にコンディション不良といった理由がなく、競争力を煽るのが藤川球児監督の目的だとすれば、冷徹なまでの選手起用だった。開幕前は左翼手、遊撃手のポジション争いに注目が集まっていた。フタを開けてみれば両方ともレギュラーは決まっていない。ある程度は予想できたが、キャッチャー枠も正捕手不在になるとは思わなかった。実績十分の梅野隆太郎が2軍スタートとなった以上、WBCで侍ジャパンの一員となった坂本の独り舞台と思われたが、意外な形で競争となった。これで坂本が今まで以上に刺激を受ければ、虎将としては言うことなしだ。いずれにしても、高橋の圧巻ピッチをリードしたことで、伏見は居場所を見つけた。例えば特定の投手に対して好相性を誇っても、そのピッチャーがローテの関係で、対戦時に投げるかどうかわからない。しかし、この場合は、相手は関係なし。高橋が投げれば伏見。無条件だ。息がピッタリと合って、しかも結果を残せば、捕手は飯が食える。8日DeNA戦(甲子園)では1カ月以上も白星から遠ざかる村上頌樹の今季7試合目登板で、坂本に代わって、伏見がマスクをかぶった。ここまで13戦スタメンの勝敗は9勝4敗で貯金を作っている。試合後の笑顔から捕手としての喜びや醍醐味、プレッシャーから解放された安ど感が漂う。レギュラーを張れなくても、生きていける。存在感の示し方は、ほかの野手とは一味違う。5月12日に36歳になる働き盛りの妙味が阪神を側面から支えている。■稲見 誠(いなみ まこと)1963年、大阪・東大阪市生まれ。89年に大阪サンスポに入社。大相撲などアマチュアスポーツを担当し、2001年から阪神キャップ。03年には18年ぶりのリーグ優勝を経験した。現在は大阪サンケイスポーツ企画委員。プロ野球日程へ