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【内田雅也の追球】悪夢を去った「経験」 - スポニチ Sponichi Annex 野球
7―0リードが7回を終えると7―4。誰しも阪神がつい2日前(20日中日戦・甲子園)にやってのけた逆転劇を思い浮かべたはずである。
ただし、今回の阪神は追われる側だった。悪夢の逆転負けという恐怖に似た嫌な空気も漂ったろう。そう、野球は怖い。監督・藤川球児は試合後、開口一番「タフでしたね」と言った。「燃えている」と語っていた伝統の一戦に「やっぱり厳しい勝負になりますね」と胸をなで下ろした。何しろ、流れが悪かった。7回表1死満塁の好機を中飛での本塁突入憤死(併殺)でフイにしていた。その裏、今季すでに4完封、1本の長打も許していなかった先発・高橋遥人が2死無走者からこの夜、2本目の長打(三塁打)に適時打、2ランを浴びた。失っても1点だった高橋が4失点で降板となった。ただし「やっぱりタフな――」と話したように藤川は決して油断はしていなかった。勝負事は優勢を意識した時が危ないという鉄則を胸に刻んでいたのだろう。7回裏2死、高橋に代えて及川雅貴を投入して断った。リードが3点となった8回裏、2日前は阪神が同点に追いついたイニングである。相手に勢いがあるなか、ラファエル・ドリスが苦しみながら、無失点でしのいだのはさすがだった。先頭への四球。遊ゴロで6―4―3併殺のはずが悪送球があって走者は残った。安打を浴びて1死一、二塁。一発同点のピンチから連続三振に切った。リードした坂本誠志郎の激しいガッツポーズに苦しさと喜びが映っていた。打ち取った打者は増田陸、佐々木俊輔という若手だった。ともにボール球に手を出してくれて助かった面もあった。いや、これも日本で通算102セーブ、38歳の経験が勝ったのだ。藤川は「どれだけタフな場面を経験してきているか、というのが大切」とたたえた。9回裏も通算127セーブ、34歳の岩崎優が時間をかけ3人で切った。惨劇など起きなかった。この夜、テレビで解説した球団顧問・岡田彰布は7―0からの逆転を「起こりうる」とする一方「プロなら絶対に負けたらあかん」と話していた。ましてや、この夜は1番に起用した新人・立石正広がすべて得点にからむ3安打を放っていた。悪夢を去り「負けられない試合」を勝ちきったのは、ベテラン救援陣の経験だった。 =敬称略= (編集委員)