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【内田雅也の追球】敗戦は教えてくれる。 - スポニチ Sponichi Annex 野球
阪神電車の甲子園駅前広場ではいま、キンシバイ(金糸梅)の花がよく咲いている。昼間は黄色い花びらがキラキラと輝くようである。
花言葉の一つは「悲しみを止める」だという。古くから薬草として痛みをいやしてきたことに由来するらしい。今季初めて3連敗を喫した夜。阪神ファンは帰り道、雨に光る花々に心の痛みを和らげてもらえるかもしれない。「この3連戦、甲子園のファンの方には辛い思いをさせましたけど」と阪神監督・藤川球児は言った。「またチームが強くなる、一つのきっかけにもできますからね」野球の神さまはいつも「負けから学べ」と諭してくれる。それは野球が人生に似ているからだろう。ずっと勝ち続けるチームなどない。負けをいかに次にいかすか。その姿勢が問われている。「スポーツは公明正大に勝つことを教えてくれるし、またスポーツは威厳をもって負けることも教えてくれる」。文豪アーネスト・ヘミングウェーが残した名言である。「要するに……スポーツはすべてのことを、つまり、人生ってやつを教えてくれるんだ」山際淳司が引用していた。短編集『スローカーブを、もう一球』(角川文庫)のなかにある。この夜は先取点こそ奪ったが、あとは打線がつながらなかった。9回裏に佐藤輝明が放った13号ソロがせめてもの慰みだった。阪神ファンが沸いたのはこの得点シーンのほかは、右翼・佐藤輝の三塁送球(3回表)、遊撃に入った熊谷敬宥の好守(7回表)、捕手・梅野隆太郎が俊足・五十幡亮汰の二盗阻止(8回表)……と守備の時だった。防戦に必死だった。反対に日本ハムの強さは十分に感じた。この3連勝で借金を返し、勝率5割である。監督・新庄剛志も手応えを感じたのではないか。前日のメンバー表交換で藤川と新庄は少し話しこんだ。「互いの健闘をたたえあう内容でした」と藤川。このカードが3試合だけではもったいない。できれば、秋の大舞台での対決を見たい。もしそうなれば、阪神は今回の敗戦で得た教訓を力にかえているだろう。きょう29日は山際の命日である。1995年、46歳で逝った。『最後の夏 一九七三年巨人・阪神戦放浪記』(マガジンハウス)で<たかがゲームが、人に希望を抱かせたりするのだ>と書いている。 =敬称略= (編集委員)