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【元虎番キャップ・稲見誠の話】また先発→中継ぎ…阪神・門別啓人の危うい器用さ…「何でも来いに名人なし」だけは、ご勘弁!
中継ぎへ配置転換となった阪神・門別啓人「多芸は無芸」「器用貧乏」「何でも来いに名人なし」…阪神・門別啓人を見ていると、そんなフレーズが次々と浮かんでしまう。先発左腕として十分に飯が食える。一方で投げっぷりの良さから、中継ぎでも試してみたくなる。逆に言えばシーズンを通じて、先発を任せるには何かが足りない。困った時に、ブルペンで使いたくなる。だから起用法が定まらないーが4年目を迎えた門別の球歴だ。2023年、東海大札幌高からD2位で阪神に入団。岡田彰布監督の目にとまり、ルーキーイヤーから1軍で2試合、登板機会が与えられた。しかし翌年は5試合登板で0勝2敗。藤川球児監督就任1年目の25年、初勝利に巡り合えた。だが登板数は12試合にとどまり、2勝3敗。ブレーク間近でブレーキがかかる。そして今季もまた、もどかしさが募る足取りだった。春季キャンプで腰の張りを訴えて、開幕1軍を逃した。5月4日の中日戦(バンテリンD)で先発したものの、5回5失点降板で敗戦投手となり、2軍降格。ここで流れが一気に変わった。ファームでは再び、中継ぎ調整に入り、ブルペン強化の一員として、1軍に戻ってきた。「もう本当に頑張るだけなので…」再昇格即登板となった27日の日本ハム戦(甲子園)のコメントから、悲壮感が伝わる。この試合は1点ビハインドの七回に登板した及川雅貴が2点を失っていた。昨季圧倒的数字を残した左腕が安定しない。開幕後は9戦無失点だった桐敷拓馬に代わる形で、門別に声がかかった。及川不安定に桐敷ファームが重なり、何度目かの「配置転換」となった次第だ。28日の3回戦も登板し、2回無失点。連投をクリアし「一球一球、丁寧に投げました。言われたら、もう一生懸命投げるだけなんで」と話した。阪神はパ・リーグ球団も含めて、他を圧倒する投手王国ではなかったのか。リーグ優勝&日本一に輝いた2023年からのチーム防御率は2・66ー2・50ー2・21。2点台を誇っていた守り勝つタイガース野球の象徴が、今季は3・13に悪化。村上頌樹、才木浩人、高橋遥人の球界を代表する三本柱を擁しながらも、1試合の平均失点は昨季より1点近く多い。左アキレス腱を断裂した石井大智が抜けただけで、ここまで悪くはならない。開幕から52試合を消化して、未だに勝利の方程式が見えない。その中に門別が放り込まれた。「芸は身を助ける」という。門別は他を見渡しても「芸」を持っている。しかし、起用する側にしてみれば先発ローテに入れるには、それなりの勇気がいる。独特の観察眼を持ち、実行に移す藤川監督ですら、この男の働き場所を決められない。3連敗を喫した日本ハム戦の3戦目の先発は木下里都だった。4回3失点で降板し、敗戦投手となった右腕の内容を見ると、門別に託してもよかった。2勝1敗と勝ち越した29日からのロッテ3連戦(ZOZOマリン)はいずれも僅差で門別の出番はなかった。ローテの最後のイスには荷が重く、勝ちパターンの出番は時期尚早…が今の評価なのかもしれない。先発も中継ぎもこなせる技量を持ち合わせる門別。声がかからないことを思えば、こうして1軍に昇格して、機会を与えられるだけでもマシ。7月10日の誕生日で22歳になる若者は、大きな可能性を秘めている。しかし個人的は、門別の特徴のひとつである「器用さ」に危うさと怖さを感じてしまう。いつかは二択に迫られる。先発か中継ぎか。成功か伸び悩みか。主力か脇役か。突然、その時は訪れるかもしれない。■稲見 誠(いなみ まこと)1963年、大阪・東大阪市生まれ。89年に大阪サンスポに入社。大相撲などアマチュアスポーツを担当し、2001年から阪神キャップ。03年には18年ぶりのリーグ優勝を経験した。現在はサンケイスポーツコンテンツビジネス局嘱託。プロ野球日程へ