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【内田雅也の追球】「球際」に強くなる方法 - スポニチ Sponichi Annex 野球
阪神・小幡竜平の失策は実に痛かった。擁護するわけではないが、緊張する場面であり、重苦しい空気が漂っていた。
0―1の7回表、2死二、三塁。スタンドでは満員観衆がジェット風船の準備を進めていた。打席に長谷川信哉。大竹耕太郎はカウント1―1からセットに入り、1度プレートを外した。バックネット裏で風船が1つ宙に舞ったのが気になったか。フルカウントとなり、今度は長谷川がタイムを取った。顔付近の羽虫を手で払った。直後、チェンジアップに泳いだゴロが遊撃に転がった。直前に二塁走者が目の前を通過した。微妙な不規則バウンドをしたかもしれない。小幡はお手玉し、あわてた一塁送球もそれた。捕球と送球の二重失策で2者が還った。風船を手にした観衆からため息がもれ、マンモス球場に響いた。「すべてにおいて球際の強さを持たなければいけない」と敗戦後、監督・藤川球児は言った。何度か書いてきたが、「球際」は巨人V9監督、川上哲治の言葉だ。著書『遺言』(文春文庫)で<「球際のプレー」「球際の野球」というのはわたしの造語で、相撲の土俵際の強さから採ったものだ。要は土壇場ぎりぎりまであきらめない、粘り強いプレーのことである>と記している。さらに<捕れそうにない球を飛び込んでいって捕って、捕れなければグラブではたき落としてでも食い止めるプロの超美技のことである。全盛期の長嶋はこうした守備を何度も見せた>とある。死去から1年を迎えた長嶋茂雄の強さを思った。小幡は5回表にはダイビングでの美技も見せていた。先発出場は5月16日広島戦(甲子園)以来13試合ぶり。藤川は「ゲームに出ていない間にね、普段どういう風にして……そういうところが出てきますからね」と、日々の姿勢を問いただすように話した。失敗の多い野球は人生に似ていると何度も書いてきた。倒れたら立ち上がることだ。川上は別の著書『禅と日本野球』(サンガ文庫)で困難を乗り越えるためには<“やる”というのがどれだけ大切なことか>と努力と反省を説いた。<基本を一つ一つ思い出してチェックしていけば、竹の節のような強さが身につく>。小幡もやるしかない。この夜、藤川が口にした「強い選手」への道である。 =敬称略= (編集委員)