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【内田雅也の追球】今こそ「感性」「初心」 - スポニチ Sponichi Annex 野球
敗戦が決まると、三塁ベンチに腰かけた大山悠輔は唇をかみしめ、しばらくスコアボードをにらんでいた。
2度、2死満塁で打席が回った。ともに佐藤輝明が四球の後だった。3回表はルイス・ペルドモ得意のシュート(ツーシーム)を打ちにでて左飛だった。5回表は吉田輝星から四球を得て押し出しで1点をあげている。今季、満塁では5打数2安打(二塁打と本塁打)に犠飛と押し出し四球で計8打点と強さを見せていた。それでも自らを責めるように、にらんでいたのである。今は5番だが、阪神で長く4番に座り、勝敗の責任を負う立場にあった大山の目に悔しさをみた。阪神は今季初の4連敗となった。とにかく打てない。交流戦14試合で33得点(1試合平均2・4点)は12球団最低。公式戦を通じての得点圏打率2割7分5厘(11日現在)は12球団中2位だが、交流戦でその勝負強さは影を潜めている。オリックスはペルドモが来日4年目、通算140試合目で初めて先発するなど8投手登板の「ブルペンデー」だった。次々と目先が変わり、戸惑った側面もあろう。もちろん、データは事前に分析している。それでも普段対戦するセ・リーグの投手とは異なり、打席での実感がない。ベンチに帰ってきた打者に後続の打者が相手投手の球筋や実感を聞くシーンもよく見られた。データの重要性は十分承知したうえで書くと、問題は感性なのではないか。「打撃は感性」だと中西太も山内一弘も、イチローも岡田彰布も語っている。落合博満は<野球が上達する一番の秘訣(ひけつ)は、技術的なことでも精神的なことでもない。その選手の感性の豊かさだ。すべてその選手の感性次第だ。そうした部分には指導者も入り込めない>と著書『コーチング』(ダイヤモンド社)に記した。感性は感受性でもある。この日が生誕100年だった詩人・茨木のり子の代表作に『自分の感受性くらい』がある。<ばさばさに乾いてゆく心を/ひとのせいにはするな/みずから水やりを怠っておいて>と始まり<自分の感受性くらい/自分で守れ/ばかものよ>で終わる。自分に投げかけた言葉だ。途中<初心消えかかるのを/暮しのせいにはするな>とある。苦しい時だが、連覇を誓った、あの2月を思いだしたい。 =敬称略= (編集委員)