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【内田雅也の追球】連敗脱出の「ニュアンス」 - スポニチ Sponichi Annex 野球
「ニュアンス」は微妙な意味合いやわずかな感覚の違いといったフランス語で、アメリカの野球人や野球ライターもよく使う。日本語で言えば勝負の「綾」だろう。
野球記者歴も42年目となると結果よりも、そこにいたる綾を読み解きたくなる。連敗を脱出した阪神には勝利にいたるまでいくつか綾があった。順にあげていきたい。4回表の追加点は無死一、三塁から大山悠輔の浅い中飛で三塁走者・森下翔太が本塁を陥れてあげた。大山は「翔太が本当にナイスランだった」とコメントしている。森下の果敢さが目立つが、相手中堅手・中川圭太の肩がさほど強くないことを分かっての判断だろう。前進してきての捕球だったが、中継の遊撃手に送球し、本塁は悠々セーフだった。6回表2死満塁で熊谷敬宥が三塁線を破る2点二塁打を放った。大きな追加点だった。熊谷を打席に迎えた際、相手捕手・若月健矢が一、三塁手に向けジェスチャー付きでセーフティーバント警戒をうながしていた。だから三塁手・宗佑磨も前進し三塁ベースよりも前に守っていた。だから、あのゴロが抜けていったのだ。今季内野安打率20%超の俊足が生んだ殊勲打でもある。高橋遥人は大量リードすると失点する傾向にある。4―0となった6回裏、4本の長短打で3点を失い、なお1死一、二塁とピンチは続いた。杉本裕太郎を左飛で2死としたが、若月には3ボール0ストライクと苦しくなった。四球で満塁にはしたくない場面だ。ストライクを取る球として選んだのはツーシームだった。外角寄り140キロ。恐らく直球狙いでフルスイングしてきた若月は、だから少し泳ぐ格好となり、三ゴロに打ち取れたのだ。沈むツーシームを決め球にもカウント球にも使える強みだ。9回表は2死にしてでもバントで送り、高寺望夢、中野拓夢の連続適時打につながった。6点中5点が勝負強さを示す「2死後打点」だった。ジョージ・F・ウィルは『野球術』(文春文庫)で名フロントマン、サンディ・アルダーソンの「野球が美しいのは、そこに一つとして絶対が存在しないことだ。微妙なあや(ニュアンス)と読みこそが野球のすべてと言ってよい」を紹介している。だから<野球は観客が細部や微妙なニュアンスに注意を向ければそれに応えてくれる>と書いている。 =敬称略= (編集委員)