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【内田雅也の追球】ミスを前提に戦う - スポニチ Sponichi Annex 野球
試合終了のプレーは三振併殺だった。あれもGEDP(ゲーム・エンディング・ダブルプレー)というのだろう。
1点を追う9回表1死一塁、フルカウントでのランエンドヒットで中野拓夢は空振り、走者・高寺望夢は二盗憤死となって幕は下りた。高寺は今季9度目の盗塁企図で初の失敗だった。ラストシーンが象徴するように、阪神の攻撃はチグハグだった。2桁10安打を放ちながら、2点しか奪えなかった。監督・藤川球児はよく「流れ、展開をみている」と大局観を口にする。その点では嫌な流れであり、試合展開だった。2回表1死二、三塁では左打ちの投手・村上頌樹でスリーバントスクイズを敢行したが、空振りで三振、三塁走者・木浪聖也も憤死で併殺となった。相手バッテリーは走者のスタートに気づいたか、床田寛樹はツーシームで外角高めに外していた。投球は沈み、村上のバットの下を通った。藤川は「流れが二転三転していたというところは、もつれたかなと思います」と話した。確かに流れは行ったり来たりしていた。広島にもミスはあった。2―2同点の7回裏1死一塁、バッテリーは相手のヒットエンドランで三振併殺に取った。だが、直後の8回表、無死二塁での送りバントは投手正面に転がり、走者・大山悠輔が三塁で憤死したのである。<ミスには面白い法則がある>と大局観に優れたプロ棋士・羽生善治が著書『決断力』(角川新書)に記している。<たとえば、最初に相手がミスをする。そして次に自分がミスをする。ミスとミスで帳消しになると思いがちだが、あとからしたミスのほうが罪が重い。そのときの自分のミスは、相手のミスを足した分も加わって大きくなるのだ>。試合終盤、相手のミスの後におかしたミスで敗戦へ流れていってしまったのだろう。羽生は「“自力”だけで、自分の描いた絵の通りに勝つなど不可能」と哲学者・梅原猛との対談で語っている=『教養としての将棋』(講談社学術文庫)=。「どうしたら相手の手が自分にとってプラスになるかを考えなくてはならない」なるほど、失敗が多い野球も同じだ。選手たちがミスすることを前提に作戦を用いて戦わねばならないわけだ。まだまだ奥が深い。 =敬称略= (編集委員)