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【内田雅也の追球】激闘を予感した一戦 - スポニチ Sponichi Annex 野球
試合後、取材を終えて東京ドーム内の関係者エレベーターで記者席の2階で降りると、本紙評論家の中畑清に出くわした。周りを3台の車いすに乗ったファンに囲まれていた。その姿から巨人、阪神、双方のファンがいる。中畑は話しかけていた。「勝負には勝った負けたはあるからね。でも、いい試合だった」
確かに敗れた阪神から見ても好ゲームだった。悔しいのは当たり前だが、互いに力を出し切っての試合だったろう。高橋遥人もいつかは負ける。森下翔太も佐藤輝明も大山悠輔も常に打てるわけではない。試合はボビー・ダルベックに先制ソロを浴び、6回表に佐藤輝の2点二塁打で逆転。7回表には前川右京に3戦連発となるソロで3―1とした。しかし、その裏、高橋が2死満塁から代打・坂本勇人に走者一掃の二塁打を浴びて、再逆転された。2死一、二塁からプロ初出場の代打・知念大成に遊撃内野安打されたのが悔しいだろう。開幕からの連勝が10で止まり、今季初黒星がついた高橋は「ええ、まあ、普通に相手が上だったっていう、だけですかね」と潔かった。「勝った負けたと騒ぐじゃないぜ あとの態度が大事だよ」と水前寺清子の『どうどうどっこの唄(うた)』(作詞・星野哲郎)にある。「ころがる 立ち上がる」「たおれる また起きる」……と堂々とした不屈の姿勢を歌っている。敗戦後の高橋の所作や言動にそれが見えた。1点を追った終盤には監督・藤川球児に、これまでとは異なる采配が見えた。8、9回表、ともに先頭が出た無死一塁で送りバントを使わなかったのだ。この作戦の変化は記憶にとどめたい。大勢に対した8回表は高寺望夢が果敢に二盗を決めた。中野拓夢も四球で無死一、二塁としたが、3、4、5番に一打が出なかった。ライデル・マルティネスに対した9回表は先頭・前川が四球で代走に植田海。打者は熊谷敬宥に代打・福島圭音を送ったが、作戦実行の前に左飛。梅野隆太郎の時、植田は2度走ったがファウルと右飛で立ち往生した。首位攻防3連戦の初戦を落とした。藤川は「大きな一戦一戦になってきますね」と、先を見通したかのように話した。巨人との優勝争いはシーズン終盤まで続くのではないか。今後の激闘を予感させた。 =敬称略=(編集委員)