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【内田雅也の追球】辛抱はいつか報われる。 - スポニチ Sponichi Annex 野球
5回に入ったとき、甲子園球場内の関係者通路で出くわした元阪神球団社長・百北幸司が「重い試合展開ですねえ」と苦笑いした。
確かに、押されっぱなしだった。この4回終了時点でスコアは0―0だが、守っては2回から4回まで先頭打者に出塁され、得点圏に進められた。打線は吉村貢司郎に抑えられ、1回裏先頭の近本光司の1安打のみ。しかも捕手からの送球で憤死しており、残塁すらなかった。ただ、野球ではこうして辛抱していると、流れが向いてくることがある。だから、百北には「逆に相手(ヤクルト)の方が嫌な展開なのかもしれませんよ」と返した。予感した通り、阪神に流れがやって来たのだった。先発・村上頌樹は6回表も1死二塁と、この夜5度目のピンチを無失点でしのいだ。2回で51球も投げていたが、6回104球でまとめる。投球回は依然セ・リーグ最多の「イニング・イーター」の本領である。その裏に一つポイントがあったと監督・藤川球児は言う。1死から熊谷敬宥が四球で出た。村上の打順で代打で起用された元山飛優が初球を一塁前に送りバントを決めた。昨年オフ、西武戦力外を受け獲得した元山は7打席目で初の犠打、見事に務めを果たした。2死二塁。近本が放ったライナーは遊撃右へ飛んだ。相手の好守に阻まれたが、攻撃にリズムが出ていた。この形が欲しいため、1死からでもバントを命じたという。「点数は入りませんでしたけど」と藤川は言った。「元山がバントをきっちり決めて近本がセンターに抜けそうな打球を打つ。一連の動きが球場全体でゲームを作ると感じました。いいつながりになり始めたと思ったところでしたから」7回裏の先頭・中野拓夢の安打、1死後の佐藤輝明2ラン、大山悠輔ソロの2者連続本塁打につながるわけである。それにしても、村上、そして坂本誠志郎はよくしのいだ。藤川も勝利監督インタビューで真っ先にたたえた。「村上と坂本のバッテリーが、らしさと言うか、粘り強く一つずつ丁寧にピンチを処理していったからこそのゲームになりました。さすがだなと思いました」元山も村上も坂本も陰のヒーローだとたたえたい。苦しくとも、やるべきことをやっていれば、いつか報われる。野球も人生もそうでありたいではないか。 =敬称略=(編集委員)