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【遠藤礼の一語一礼】工藤が首を振ったのではなく梅野が“振らせた”160キロ剛球を加速させたサイン - スポニチ Sponichi Annex 野球
劇的なサヨナラ勝利を飾った7月11日のヤクルト戦(甲子園)の8回表にはプロフェッショナルな「すごみ」がいくつも詰まっていた。
1-0の状況で先発・伊藤将からバトンを託された工藤泰成投手(24)は無死満塁のピンチを背負ったものの、窮地でギアチェンジ。160キロ台を連発すると、19球目には球団最速タイとなる163キロをマークした。追い込まれた状況でも縮こまることなく、持てる力を文字通りMAXに発揮した若き剛腕。150キロ台を投じる投手が珍しくなくなった現代でもやはり「160」はスペシャルだ。そして、その剛球をさらに“加速”させたのが梅野隆太郎捕手(35)の存在だった。1死満塁から工藤が投じたセデーニョへの2球目の161キロのショートバウンドを逆シングルで好捕。言うまでもなく逸らせば同点、逆転の危機に陥るところだった。命拾いした工藤は肩を大きく上下させて、ほっとひと息ついたようなリアクション。心強かったはずだ。最後はフォークで空振り三振。これも梅野はブロッキングでしっかりと止めた。かつて在籍した藤浪晋太郎の剛速球、ピアース・ジョンソンのパワーカーブ、ロベルト・スアレスのツーシーム、ラファエル・ドリスの急降下するフォーク…数々の“クセ強”な宝刀を体とミットで受け止めてきた背番号2の真骨頂だろう。それでも、個人的に印象に残ったのは2死満塁でサンタナを空振り三振に斬ったウイニングショット。2-2と追い込んで6球目を投じる前に工藤は2度、3度、4度とサインに首を振った。ようやく決まったように見えた決め球は外角高めの直球。助っ人のバットは豪快に空を切った。表面上は直球にこだわった工藤の強気の投球だけが浮かび上がるが、それだけではない。試合後、梅野は「本当にチャンスに強い、駆け引きのあるバッター」とサンタナを評した。せめぎ合いがあったのだろう。来日6年目と経験豊富な主軸がパワーだけの助っ人とは思っていない。バッテリー間には「首を振る」サインも存在する。梅野は工藤に何度か首を振らせ、サンタナの読みを狂わせたのではないだろうか。もともとバッテリー間の答えだった直球を遠回りしながらファイナルアンサーに選んだように感じた。160キロ超えの直球も後ろに逸らしたり、勝負どころで選択を誤ったりすれば敗戦につながる。工藤と梅野のバッテリーが“力任せ”にならずに奪った大きなアウトだった。